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心理学におけるモデリングとは

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心理学におけるモデリングとは
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心理学におけるモデリングとは

心理学において「モデリング」とは、アルバート・バンデューラを提唱した「観察学習」のことを一般的には指します。授業や読書、指導など、言語を通した学習(直接学習)ではなく、対象となるモデルを観察することで学習する方法のことを言います。

簡単な例としては、親が子どもにしつけをする際に「これをしてはダメ」「これをしないの」と口頭で伝えたことではなく、親がしていることを見様見真似でやり始めることが観察学習にあたります。

私も子育てをしているときに感心しましたが、まだ言葉の喋れない1歳児でも、自分で遊んだオモチャを棚に戻すことがあります。これは「オモチャを棚に戻しなさい」と言ったからではなく(実際に言ったことはない)、親である私や妻がオモチャを片付けているのを見ることで、学び、そして実際に行うことがあるというわけです。

この観察学習が唱えられるきっかけとなった有名な「ポポ人形実験」では、モデル(被観察対象)となる大人が、子どもの前で人形を殴るなど暴力的な行動をすると、子どもも暴力的な行動をする傾向が増えるなどの結果が得られました。

この研究結果の影響は大きく、子どもに暴力的な映像を見せることは、子どもに対して暴力的な人格を育ててしまう可能性があることを危惧することにつながりました。そうした影響を避けるために、R指定など「一定の年齢になっていない子どもには見せない」という取り決めを行うに至ったきっかけ、根拠とされています。

よく「2次元と現実を一緒にするな」とか「漫画やアニメの影響なんて限られている」という言葉をSNS上で見ますが、実際のところは、「現実とは違うのは“頭ではわかっている”けれども、無意識的に“影響を受けてしまう”」というのが現実のようです。

これは「模倣犯が増える」とかそういうことではなく、「そういう思考」「そういう感情」「そういうリアクション」「そういう反応的行動」を誘発するようになってしまう、ということです。

現在、脳科学の分野では「ミラー・ニューロン」という神経細胞が注目されて久しいですが、ミラー・ニューロンは「自分が見た人の感情や行動を司る脳の電気信号のパターン」を「自分の脳でもいくぶんか同じように電気信号を流す」ということをするようです。

これは学習にも関わっており、観察学習が起こる根拠の1つとして考えられています。

NLPにおけるモデリングの応用

おそらくこのページを検索されてこられた方は、そうした「心理学的なモデリング」というよりもNLP(神経言語プログラミング)などで、「結果を出すなら、モデリングをしましょう」「成功の秘訣はモデリングです」などと言った言葉を聞いたから、「モデリングの定義」を知りたいと思われ、検索したのではないでしょうか?

NLPなどで言うモデリングはアルバート・バンデューラが提唱した観察学習からさらに実践的な概念になっています。

NLPにおける「モデリング」とは、対象となるモデルを観察し、「思考」「行動」を真似ることで同じ「結果」を出すことを目指す取り組みのことを言います。

「観察学習」と「モデリング」の違いは、「観察学習」が無意識的・自動的に自分が選択することなく観察していることを学び、影響を受け、行うようになるのに対し、「モデリング」は意識的・積極的に観察対象となるモデルを理解して、分析し、思考・行動を真似ようとすることです。

もし仮に「同じ状況」であれば、「同じ行動」を取ることで「同じ結果」が出るのは自明のことです。重要なことは、もし仮に「モデルと同じ状況」だったとしても「モデルと同じ行動」を取るのが心理的に難しいことです。ですから、「モデルと同じ思考」も真似ることによって、同じ行動を取りやすくすることを目指すのです。

例えば、街を歩いていて、自分にとってものすごくタイプな女性や男性を見かけたとします。声を掛けて、連絡先を聞いたり、カフェに誘うことができたら、恋人になれるかもしれません。実際、そうして街中だけではなく、学校や職場、いろいろな場所で声を掛けることで恋愛関係に発展することは多いです。

しかし、いざ声を掛けようと思った時に、「行動できない」ということがあるも想像できるでしょうか?胸がドキドキしたり、緊張して手が汗ばんだり、「断られたらどうしよう、、、」など頭によぎることで、声を掛けることができないこともあるかもしれません。

誰かに声を掛けるのに必要な能力は「発声する」だけですから、この場合、能力的に行動できない理由はありません。しかし、心理的に行動できないことはあるわけです。

例えば、職場で気になる人に声をかけられない人が「迷惑がられたらどうしよう、、、」と思っているのに対して、例えば、気軽に声をかける人は「どうやって、楽しませられるかな?」と思っているとします。それぞれ声をかけることに対して紐づく感情は異なってくるのがわかるでしょうか?前者「不安」を感じやすいですし、後者は「ちょっとわくわく」しています。

不安を感じている人の行動は抑制され、ちょっとわくわくしている人の行動は促進されます。

もちろん声をかけたあとの結果は、「行動の質」(スキル)やそもそも「誰が」声を掛けるのかなどによって、変わってきます。

しかし、結果の前に、行動をするだけでも、行動を真似るには「思考」も真似ることが重要になってくるわけです。そのため、NLPのモデリングではモデルの「思考」もモデリングすることを重要視ししています。

効果的なモデリングのやり方

心理学、あるいはNLPにおける効果的なモデリングをやり方についてご紹介します。

効果的なモデリングと効果的ではないモデリングの差は「モデリング対象が行動をする時に、何に焦点を当てているか」についてどれだけ理解できているかということです。

効果的ではないモデリングが「目に見える行動」に注目しているのに対し、効果的なモデリングでは「行動をする時の頭の中」に注目しています。

例えば、私が以前、友人とテニスをすることがありました。初心者の私はラケットでボールを打つと、どうしてもボールが高く飛んでしまい、相手のコートを越えていってしまいました。ちょっと力を入れると「ホームラン」してしまう状態です。

そこでモデルとなる友人を「行動観察」してみると、経験者の友人は手を「すっ」「すっ」と力を抜いてラケットを振り抜いているように見えました。

(よし、そうか!すっ、すっと力を抜いて振り抜いたらいいのか)

そう思って、ラケットを振り抜いてみると、やはりボールは高く飛び、いわゆる「ホームラン」になってしまいます。

(手首の角度が悪いのか?腰の回し方か?)

いろいろ観察してみるのですが、なかなかうまくいきません。

そこで次は「思考を聞き出す」というアプローチに変更しました。具体的には「ラケットで打つ時、何を考えているの?どこに注目しているの?」と聞いてみたのです。すると、友人は「うーん、、、」と少し考えて言いました。

「打つときは、相手のコートのボールが落ちるところを見ていて、あとは腰が自然についてくるイメージかな」

「おお!そうなんだ!ありがとう!俺は打つ時、ラケットの打面に注目してた!そのイメージでやってみる!」

そう言って、再開してみると、なんと一打目からきちんと相手のコートにボールが入るばかり、ラリーができるようになりました。

私もこんなに上手くいくものなのかと驚きましたが、これが「思考も真似る」というモデリングの秘訣だと思います。

モデリングをするとき、真似することを「レシピ」に例えられることがあります。レシピを真似することができたら、何十年も修行し、開発した料理も、そうした経験なしに、味の再現することができるからです。

効果的なモデリングを行う際、重要なこととして世界No1コーチと呼ばれるアンソニー・ロビンズがよく語る言葉として「モデリングする際には、料理人をキッチンに連れて行ってレシピを聞け」という言葉があります。

これは実際にモデルととなる料理人に手を動かしてもらわないと、モデル自身が「どんな思考で、何に注目して、行動をしているか」が思い出せないからです。

人の知識には「暗黙知」と「形式知」という2つがあります。

形式知はまさに「レシピ」として書き出されたような言語化や可視化された、誰にでも活用できる教科書的な知識です。それに対して、暗黙知は「なんとなくこうするのがコツ」という今までの経験からできるようになった、いわば「勘所(かんどころ)」のようなものです。

モデルはこうした暗黙知を言語化していないので、やりながら思い出してもらえないと、言語化が難しいわけです。

私が「テニスボールを打つ時に、どこに注目しているの?」と友人に聞いた時も、彼はいままでそれを意識していたわけではありませんでした。聞かれて初めて考え、言語化したわけです。

ですから、効果的なモデリングを行う際には、「思考」をモデリングする必要があり、それは多くの場合、言語化されていませんから、モデルを現場に連れて行って「行動手順」を実際に行ってもらいながら、逐次「思考」「何に焦点を当てているのか」について質問しながら聞き出すことが重要になってきます。

モデリングの実践

例えば、ビジネス本を読んでモデリングをしたいことがあると思います。

それは「コーチングの方法を学ぶこと」かもしれませんし、「ネット集客をすること」かもしれませんし、「彼女を作ること」かもしれません。

しかし、多くの人はモデリングすることに失敗し、実行に移せず、結果が得られていません。

まず、ビジネス本を使って、モデリングをしているときには「レシピ本を読んでいるのだ」という認識を持つことです。

すなわち「電車の中で読んで、あとで実行しよう」はありえないわけです。

電車の中で、レシピを読んで、何も見ずに料理をしようとする人はいませんよね?

ビジネス本の場合も同じで、まず理解するために電車の中で読むのはいいとしても、実行するときには開いて該当するページを見ながら行いましょう。料理をするときにレシピを開いておくのと同じです。

実行するときは、途中で材料を省略したり、手順を省いたらいけません。それでは全く別のものになってしまうからです。

例え少量だったとしても、調味料のどれか1つでも抜けてしまったら、全く別の味になってしまいますよね?味噌汁から出汁を抜いてはいけないのです。

たしかに材料がなかなか集められないことはあります。しかし、ここで、材料を変えれば変えるほど、全く別の料理になってしまいます。ビジネス本の場合も同じです。

「リサーチをしてください」「食べるものは重さを測ってカロリーを記録してください」「服はサイズを合わせて買ってください」こういう1つ1つを丁寧に行わず、スキップすることで、成果がでなくなります。

成果が出ていない人は、本当に無意識にこうしたステップを抜かすか、手を抜いて適当にこなそうとしてしまいます。

新しいレシピを見ながら料理をしたことがある人はわかると思いますが、本当に注意深く、何度もレシピを見ながらやらないと、大抵手順を間違えます。

同じことがビジネス所でも起こりますので、注意をして、丁寧に行うようにしましょう。

うまくモデリングが実践できないとき

モデリングを行う際、前章の方法で行おうとしても、うまくできないことがあります。その時は、下記の注意点を意識しながら、自分がきちんとモデリングできているかをチェックしてみてくだしあ。

お勧めは、「紙に書きながら、確認すること」です。頭の中で行えば行うほど、チェックするのが難しくなります。

注意点1:ステップをまず把握する。

きちんとステップが把握できていますか?

紙に手順が書き出せなければ、把握できていないでしょう。

注意点2:ステップが大きすぎる

ステップが大きすぎませんか?

例えば、ステップの1つが「清潔感のある髪型にする」とあったとします。

日頃から「清潔感のある髪型にしよう」と思っている人にとっては、問題のないステップだと思います。しかし、「あまり清潔感のある髪型ではないな」と思っている人にとっては、行動するのが難しいかもしれません。

その場合は、「細かく砕いてステップを細分化」します。

例えば、以下のようなステップです。

  1. 「清潔感のある髪型」とはどんなものか検索して理解する
  2. 自分の年代のオススメの髪型から清潔感のある髪型を検索する
  3. 勧められている髪型の種類がわかったら、自分と頭や顔の形の似ている芸能人などの髪型を探す
  4. 求める髪型が決まったら、美容院予約アプリで、近所で似ている髪型のヘアカタログを見つける
  5. 担当している美容師さんを予約する
  6. 求めている髪型を印刷して見せながら切ってもらう
  7. スタイリングの仕方を美容師さんに教えてもらう(必要に応じて動画を撮っておく)
  8. 必要なスタイリング剤を買う
  9. 実践し練習する

このような感じです。

「清潔感のある髪型」を日頃からしている人たちが一般的にしているステップなので、その場合は「清潔感のある髪型にする」でもいいです。

しかし、あまり気にしていない人にとっては何をしていいのかわからないので、細かくステップに分けると実行しやすくなります。

なお、慣れてきたら省略もできると思いますが、一般的に省略すると効果は落ちてしまいます。

例えば、ベテラン主婦と素人主婦がカレーを作ると、素人主婦がカレールーの箱のレシピ通りに作ったカレーのほうが、ベテラン主婦たちが普段通りに作ったものより圧倒的に美味しいというのを
テレビでやっていたのを観たことがあります。

注意点3: ステップが把握できているのに、行動に移せない場合は、健康状態を改善する

ステップを細かくきちんと把握できているにもかかわらず、実行できないときがあります。

その場合は、自分の頭がスッキリしていて、健康的な状態で行動するようにしましょう。

心理学の世界では「意志力が高い状態」と言いますが、具体的には「ぐっすり寝て起きた朝」が一番高いです。

注意点4:行動を制限している思い込みを解除する

体調が良く、特に心配事などがなく、ぐっすり寝れて起きた朝でもできない場合は、「行動を制限している思い込み」を明らかにして、変更します。

「行動を制限している思い込み」は例えば、「美容院に行くのが恥ずかしい」「美容師さんにしてもらいたい紙を印刷しても渡せない」とかそういうことです。

その場合、いろいろな方法で思い込みを変えられますが、一番簡単なのは「実際にやっている人にどう考えてやっているか」を聞くことです。

聞けない場合は、「どう考えているのだろう」と想像してみましょう。

それと同じ考え方を持とうとすると、行動しやすくなります。

注意点5: 失敗は仕方がないと思う

レシピを見ながら料理をすれば、すぐにわかるのですが、レシピを見ながら、丁寧にやっても、間違えて失敗します。

火加減を間違えたり、茹で時間を間違えたり、もしかしたら砂糖と塩を間違えるかもしれません。

レシピがあっても、スキルが低いから、繰り返し訓練することが必要なものは多いです。

ビジネス本のノウハウは「レシピ」です。レシピを正しく実行するには「スキル」が必要なものは多いです。

ですから、失敗を繰り返しながら、学び、スキルを高めていくことが重要です。

プロ野球選手も打席に立っても、60%は失敗します。同じ気持ちで失敗を許容しながら、前に進むのがいいと思います。

モデリングまとめ

心理学における「モデリング」とは一般的には、口頭など言語を通した「直接学習」に対する言葉として、観察によってモデルから学ぶ「観察学習」のことを言います。

ただし、実際に「モデリング」と言う言葉が使われる際には、そうした教育学、あるいは心理学的なアカデミックな定義を超えて、「思考、感情」を真似ることで、「同じ結果」を得ることを目指す、積極的な学習方法を指すことが一般的です。

効果的なモデリングを行うには、モデルの暗黙知となっている「レシピ」を聞き出すことが重要なので、モデルが実際に行動を起こす場面で「モデルの思考」を聞き出し、「思考」を真似することで、それに伴う「行動」が自然な形で真似できるようにすることが大切です。

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この記事を書いた人

長谷川大輔のアバター 長谷川大輔 人生の帰路で出会うコーチ

日本人として初めて世界No1コーチと呼ばれるアンソニーロビンズ氏のコーチング会社のコーチ認定プロセスを修了。独立後、プロコーチ歴12年。東京、大阪、名古屋、福岡でセミナーを開催。のべ数千名。

現状に満足しておらず、何か仕事や人間関係、人生に変化を起こしたい、何かを変えたい時のヒントを提供しています。具体的には心理学をベースとした変革の方法、人間関係の課題解決、目標設定や時間管理、パフォーマンス管理などについてお伝えしています。

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